エッセイ
Vol.40 二つの命を守る取り組み
厚生労働省から発表されたわが国の人口動態によりますと、出生順位別にみた母親の平均年齢の年次推移は、1975年の第一子出生の母親の平均年齢は25.7歳、第二子が28.0歳でした。
40年が経過した2015年のデータで、第一子出生の母親の平均年齢は30.7歳、第二子が32.5歳と日本人の出産年齢が徐々に上昇してきているのが分かります。若い女性でも乳がんや子宮頸がんなどのがんに罹患することが少なからずあり、出産年齢の上昇に伴い妊娠期にがんに罹患する割合も増えてきているのが現状です。妊娠1000に対し一人の妊娠期がんの患者さんがいると言われており、沖縄県では年間約16-7人の妊娠期がん患者さんがいることが考えられます。
妊娠期にがんに罹患した場合、今までは人工中絶が行われることも少なからずあったようです。しかしながら医学の進歩とともに妊娠を継続しながらがん治療を行う「二つの命を守る」ことが可能になってきました。
妊娠期に化学療法などの強い治療を行っても胎児への影響は少ないことが分かってきましたが、使用する薬剤や投与を行う時期によっては胎児へ影響を及ぼすことも少なからずあります。医療者のみならず県民と正しい情報の共有が重要で、妊娠期がん治療に関する医療連携システムの構築が不可欠です。
沖縄県では7月に沖縄県妊娠期がん診療ネットワーク協議会が発足しました。本協議会ではがん治療医、産科医、新生児科医師の連携体制の構築を行い、母体のがん治療を行いながら胎児のフォローアップあるいは出生後の児のフォローアップを行っていくことを主目的としています。
二つの命を守る、多くの皆様が安心してがん治療が受けられるようなシステムが沖縄にもできたことは喜ばしいことです。
沖縄県妊娠期がん診療ネットワーク協議会に関する問い合わせは、事務局 tel:098(858)5557。(乳腺科)
(琉球新報論壇 2017年9月6日掲載)
那覇西クリニック乳腺科
玉城 研太朗
最終更新日:2017.09.06