エッセイ
Vol.20 超音波
「玉城さん、2番へお入りください」診察室でT先生が呼ぶ。
声の高さは、高からず低からず、バリトンという高さである。女性の高い声をソプラノともよぶ。
ソプラノよりももっともっと高く人間の耳に聞こえない音を出す器械がある。どこにあるの?
日本中の病院にあるのです。エコーといったり超音波といったりするのです。
エコーとは“こだま”です。超音波を発信して跳ね返ってきた超音波をコンピューターで計算して小さなテレビに写し出してくれる。
最近は立体的にも見えるようになった。お腹の中のお赤ちゃんが笑っているのも分かるようになったのでお母さんの楽しみが増えてきた。
「あなたの肝臓は脂肪がいっぱいですよ」「胆石がありますね」「心臓に穴があいている」
真っ暗やみの中で話をしながら、お腹やおっぱいにゼリーをぬり、ヌルヌルにして器械を滑らせていく人たちがいる。医療で使う超音波は日本で開発された。そのために日本には外国より超音波の専門家が多い。
マンモグラフィでおっぱいの写真をとる。「ここに“しこり”がありそうだが?」 「どれどれ超音波でみてみよう。やっぱり“しこり”がある。しかもこれは“ガン”ですね」そうです!しこりを見つけるのは超音波がすぐれているのだ。
乳腺症という張りのある硬いおっぱいの人がいる。少し乳ガンができやすいといわれている。毎年検査をしている内にレントゲン(マンモグラフィ)に写らない3ミリのしこりを技師が発見してくれた。「どこにあるのだ。見つからないぞ」私はあせるのである。技師が医者より上手なのだ。彼女たちの所見を見ながらやっと探し当ててホットする医者である。
超音波に写し出される映像をみながら、3ミリの“しこり”めがけて細い注射針を刺していく。看護婦さんが注射器を吸引して細胞を吸い取るのである。ほんの少ししかとれないが、中にはしっかりとガン細胞がとれてくるのである。超音波がなければガンと診断できない。もちろん手には触れない早期ガンである。
すばらしい技師たちである。医者も負けないぞ!!
(2006年4月21日 掲載)
那覇西クリニック理事長
玉城 信光
最終更新日:2006.04.21