エッセイ

  1. ホーム
  2. エッセイ
  3. Vol.15 リズム

Vol.15 リズム

 リズミカルにジャズの流れる空間。スポットライトの下でカクテルを味わいながら?夜のムードに浸っている。

 クラブOR(手術室)へようこそ。目のかわいい女性に囲まれながらまばゆいばかりのスポットライトの下でゆっくりと、ときにはすばやく手を動かすのである。

 かわいらしい目からすると、さぞかし美しい女性であろうと思われるが決して素顔を見せることのない女性たち。無言のままに絹の糸がスルスルとのびて鉗子にまとわりつく。素早く血を止めるのである。

 ピンと張り詰めた空気が手術室をおおう?と一般の人は考えるが違うのである。

 一生懸命に手術をするようではまだまだ半人前である。手術はリズムでするのである。体のリズム、室内の音楽のリズムが一致するといつの間にか手術は終了するのである。リズムのよい手術は美しい。某大学には石原裕次郎とともに手術をする教授がいると聞く。ある陶芸家も裕次郎になり切って皿を回すらしい。ブ ルーの魚が微笑んでいる。

 リズムを体に覚えさせるまでが大変なのだ。手術の本を数冊、解剖の本を数冊机に並べながら手術の映像を頭の中で描いて行くのである。何度も何度も繰りかえしている内に“ブラックジャックのように”なるのである。

 リズムができたら、自分の弦をひいてみるのである。手術の助手の弦、看護婦さんの弦が共鳴するように少しづつ鳴らしてみるのである。お互いの弦が響きあうとすばらしいハーモニーがかもしだされる。もう大丈夫、一度鳴り出した音楽とリズムは楽しい会話とともにORの空間を満たしていく。他の人々がうらやむ 楽しい楽しい“クラブOR”。

 ときには不本意ながら中心的な特別会員にならなければいけない場合もある。安全と確実をモットーにしているので安心して1回だけの特別会員になってください。レギュラーメンバーが責任をもって悪い根っこを採ってあげます。

 ジャズのリズムにのりながらクラブORのメンバーは今日も頑張っているのである

(2005年3月29日 掲載)

那覇西クリニック理事長
玉城 信光

最終更新日:2004.03.29