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Vol.17 仲間たち

 妻の大好きな御三家のひとりがこのようなタイトルの歌をうたっていた。仲間たちは楽しい時にも苦しい時にも一緒にいてくれるのである。わたしも学生時代の仲間たちに大変お世話になっている。沖縄の女性の自殺が少ないのはたくさんの仲間たちと果てしないおしゃべりのおかげだと思っている。

 先日、あけぼの会という乳がん患者会の創立25周年の集りが福岡であった。九州各地より200名近い方が集まった。手術したばかりの奥さんに付き添って来たご主人もいた。沖縄からも十数名"模合金"を積み立てて参加したのである。同じ病の仲間たちの集いである。会長はじめ皆さん元気がよい。さすがに女性だと思った。「病気をしたのになんでこんなに明るくて元気なの」と病院にお見舞いに来る人々は皆おどろいている。胃の病気ではないので翌日からご飯はたべられるし、元気がなくなることもない。

 病気が恐いのは入院するまでで、入院したとたん元気な乳がんの患者さんが目の前にいる。一番の安心料である。手術翌日から皆でデイルームに集まり「さー、手をあげましょう」と一緒にリハビリに取り組んでいる。お食事タイムにはまたデイルームに集合し病気のことや家族のことなどお話に終わりがない。眠るのがもったいないくらいである。

 いつもは家族の世話に費やされる時間を病気のおかげで24時間ほとんどが自分のものになった。何でも相談に乗ってくれる仲間たちが側にいてくれるのである。

 手術に行く時には元気な皆が『がんばってね!』と送りだしてくれる。手術後10日くらいで結果がでる。結果が出ると家族を含めて面談である。「がんがリンパ節に転移していたので抗がん剤を使わないといけません」「そうですか。玉城さんと同じ治療ですか?」「玉城さんにも強い抗がん剤を使ったのですが、元気だったでしょう。あなたもきっと大丈夫ですよ」同じような治療をした方がいると勇気づけられるものである。

 このように元気になった人が次の人にまた元気をあげてくれる。医者や看護婦さんの言葉よりも力強い励ましである。800名余りの人に受け継がれた伝統である。それにしても第1号で手術を受けて頂いた方は仲間がいなくて寂しかったであろう。たいへん感謝している。

 退院後もこのつながりは切れることがない。落ち込んだ時に電話で相談できる仲間たち。一緒に笑ったり、一緒に泣いてくれる仲間たちと看護婦さん。明るくて、楽しい楽しい入院生活である。

(2004年8月10日 掲載)

那覇西クリニック理事長
玉城 信光

最終更新日:2004.08.10