エッセイ
Vol.02 長生きの秘けつ
年をとると「どうして?物忘れがひどくなるのか」「どうして?耳が遠くなるのか」「どうして?人のいうことを聞かないのか」
最近お年寄りの気持ちがよくわかる様になった。わたしも仲間入りをしているのかも知れない。先日90才をこえるおじいちゃんが足にけがをしてクリニックをたずねてきた。
娘達が曰く。「ふとんをしまおうとして机が倒れけがをした」「いらんことをするなといったでしょう」「いくらいっても聞かないんだから」
おじいは誰のせわにもならず自分で自分のことをしようとしたのである。たいへんすばらしいことである。そもそも90才をすぎて歩けること、自分のことができることなどわたしには考えることもできない。
今もおそらく昔も、気を使い過ぎる人は胃潰瘍ができるし、不眠症で夜も寝られず早く亡くなったのではないだろうか。
「どうして?物忘れがひどくなったの」「いやなことを早く忘れるためだよ」「いやいや、そもそも嫌なことを覚えるのをやめたのだ」70年も生きてきて今さら子供達に気をつかって生きられますか。自分勝手をするのだ。
「どうして?耳が遠くなるのか」「嫌なことを聞かないためだよ」「本当は聞こえるのだが、お前達のために聞こえないようにしたのだ」耳が遠くなると自分に都合のよいことしか聞こえてこないから楽なんだ。私の家の内のひとも都合のよいことしか聞かなくなった。
「どうして?人のいうことを聞かないの」「おまえのいうことも分かるけれど、いまさら面倒くさいのさ」「お前達も親のいうことを聞かなかったじゃないか、おあいこだよ」
お年寄りを大事にしてはいけない。自分のことは自分でさせなさい。年寄りを大事にし過ぎると、ボケが始まるし、足腰が急に弱って、それこそ家中が大騒ぎになる。年寄りを弱らせるのは簡単である。何もさせないことだ。お年寄りよまけてはならない。
長野のお年寄りの合い言葉は「ぴんぴん、ころり」だと聞いた。すばらしい合い言葉である。元気にぴんぴん飛び跳ね、倒れたら長わずらいをせずに、コロリといってしまう。この合い言葉で長野の男性は沖縄をぬいて長生きの日本一になった。沖縄の男よ!長野にまけるな。
(2002年8月12日 掲載)
那覇西クリニック理事長
玉城 信光
最終更新日:2002.08.12