2023年

早期乳がん比率を70%以上まで持っていきたいものです。
病期別術後遠隔無再発*率曲線 1996.6~2023.5 (n=5187)

病期 | 0 | 1 | 2 | 3 |
---|---|---|---|---|
5年無再発生存率 | 99.7% | 97.2% | 87.3% | 66.3% |
10年無再発生存率 | 99.7% | 94.8% | 83.1% | 56.7% |
15年無再発生存率 | 99.7% | 94.8% | 80.1% | 53.4% |
20年無再発生存率 | 99.7% | 94.4% | 77.3% | 43.5% |
早期(0期と1期)の乳癌は20年以上経っても9割以上の患者さんは遠隔再発がなく、早期発見(乳癌検診)の重要性が分かります。
*遠隔再発とは乳房切除した後の皮膚や温存した乳房内の「局所再発」以外の再発(肺、肝、骨、脳などへの転移)のことです。
病期別術後生存率曲線 1996.6~2023.5 (n=5187)

病期 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 |
---|---|---|---|---|---|
5年生存率 | 100.0% | 99.3% | 94.8% | 80.3% | 56.5% |
10年生存率 | 99.5% | 97.4% | 89.2% | 67.3% | 43.7% |
15年生存率 | 99.5% | 95.8% | 84.2% | 57.8% | 32.8% |
20年生存率 | 99.5% | 93.0% | 81.9% | 57.8% | 32.8% |
サブタイプ別術後無再発*率曲線 2011.4~2023.5 (n=2542)

サブタイプ | HR+/HER2-(A) | HR+/HER2-(B) | HR+/HER2+ | HR-/HER2+ | HR-/HER2- |
---|---|---|---|---|---|
5年無再発率 | 97.2% | 89.0% | 93.2% | 91.6% | 79.3% |
10年無再発率 | 96.1% | 85.2% | 90.0% | 91.6% | 77.7% |
この5つのサブタイプは乳癌細胞がホルモン受容体(Hormone Receptor)を有するか否か(HR+かHR-か)と、HER2蛋白の過剰発現があるかないか(HER2+かHER2-)、更にホルモン受容体を有する(HR+)乳癌は癌の転移や増殖の強さでAとBに分けます。
* 免疫染色Ki67を行うようになった2011年4月以後の症例です。
** サブタイプは免疫染色によります。HR+の症例の中でKi67 20%未満をルミナルA乳癌(HR+/HER2-(A))、20%以上をルミナルB乳癌(HR+/HER2-(B))としました。
1) ホルモン療法が中心の乳癌はルミナルA(全体の55%)とB(全体の24%)に分かれ、手術後10年目でそれぞれ、約5%と約15%に再発を見ております。
2) 抗HER2療法が中心のHER2陽性乳癌はHR+/HER2+(全体の8%)とHR-/HER2+(全体の6%)とも約10%の再発率です。
3) 抗癌剤治療が中心となるトリプルネガティヴ乳癌(HR-/HER2-)(全体の7%)は再発率が最も高く、約25%(4分の1)になっています。
このため、ルミナルB症例では抗癌剤や分子標的薬(CDK4/6阻害薬)の追加、トリプルネガティヴ症例では免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)が使われるようになっており、再発率の低下に期待しております。
サブタイプ別術後生存率曲線 2011.4~2023.5 (n=2599)

サブタイプ | HR+/HER2-(A) | HR+/HER2-(B) | HR+/HER2+ | HR-/HER2+ | HR-/HER2- |
---|---|---|---|---|---|
5年生存率 | 99.4% | 95.4% | 97.2% | 95.5% | 81.6% |
10年生存率 | 98.0% | 91.7% | 91.2% | 95.5% | 78.3% |
これに対してトリプルネガティヴ症例では再発はほぼ確実に癌死に繋がってきた。しかしこれも免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)や分子標的薬(パープ阻害薬など)の導入により改善が期待されています。
Stage 1 サブタイプ別術後無再発率曲線 2011.4~2023.5 n=1467*

サブタイプ | HR+/HER2-(A) | HR+/HER2-(B) | HR+/HER2+ | HR-/HER2+ | HR-/HER2- |
---|---|---|---|---|---|
5年無再発率 | 99.0% | 95.3% | 98.0% | 100.0% | 93.6% |
10年無再発率 | 98.8% | 89.5% | 93.6% | 100.0% | 89.7% |
また、術後10年まで観察すると、ルミナルB症例の再発率はトリプルネガティヴ乳癌と同しになっています。このため、ルミナルBで化学療法の必要性をより確実に知るために、Ki67の免疫染色の他、最近は多遺伝子アッセイ(OncotypeDx、Curebest 95GC Breast、等)を用いることが多くなっています。
Stage 1 サブタイプ別術後生存率曲線 2011.4~2023.5 n=1467*

サブタイプ | HR+/HER2-(A) |
|
HR+/HER2+ | HR-/HER2+ | HR-/HER2- | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|
5年生存率 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 95.3% | ||
10年生存率 | 99.7% | 96.3% | 100.0% | 100.0% | 91.2% |
ホルモン療法が中心のルミナルB症例も再発が生存率の低下に繋がるため、手術後の経口抗癌剤や分子療養薬(CDK4/6阻害薬)が検討されます。
Stage 2 サブタイプ別術後無再発率曲線 2011.4~2023.5 n=902*

サブタイプ | HR+/HER2-(A) | HR+/HER2-(B) | HR+/HER2+ | HR-/HER2+ | HR-/HER2- |
---|---|---|---|---|---|
5年無再発率 | 93.7% | 87.4% | 91.5% | 90.5% | 74.0% |
10年無再発率 | 90.4% | 84.2% | 89.4% | 90.5% | 74.0% |
ルミナルBが術後4年を過ぎると再発が急激に増え、術後7年以後は再発が見られなくなります。Stage 2のルミナルB乳癌では術前または術後抗癌剤治療に加え、CDK4/6阻害剤(内服分子標的薬)の術後治療が保険適用となっており、推奨されています。
Stage 2 サブタイプ別術後生存率曲線 2011.4~2023.5 n=902*

サブタイプ | HR+/HER2-(A) | HR+/HER2-(B) | HR+/HER2+ | HR-/HER2+ | HR-/HER2- |
---|---|---|---|---|---|
5年生存率 | 97.9% | 95.7% | 96.7% | 96.5% | 80.1% |
10年生存率 | 96.0% | 92.2% | 82.7% | 96.5% | 78.0% |
Stage 3 サブタイプ別術後無再発率曲線 2011.4~2023.5 n=173*

サブタイプ | HR+/HER2-(A) | HR+/HER2-(B) | HR+/HER2+ | HR-/HER2+ | HR-/HER2- |
---|---|---|---|---|---|
5年無再発率 | 85.5% | 68.7% | 82.5% | 72.6% | 64.8% |
10年無再発率 | 72.4% | 68.7% | 82.5% | 72.6% | (64.8%) |
トリプルネガティヴ - 1年9ヶ月(再発率 35.2%)
HR-/HER2+ - 2年1ヶ月(再発率 27.5%)
HR+/HER2+ - 2年6ヶ月(再発率 11.2%)
ルミナルB - 2年11ヶ月(再発率 31.3%)
ルミナルA - 6年1ヶ月(再発率 27.6%)
Stage 3 サブタイプ別術後生存率曲線 2011.4~2023.5 n=173*

サブタイプ | HR+/HER2-(A) | HR+/HER2-(B) | HR+/HER2+ | HR-/HER2+ | HR-/HER2- |
---|---|---|---|---|---|
5年生存率 | 100.0% | 77.4% | 94.7% | 74.2% | 78.3% |
10年生存率 | 83.3% | 77.4% | 94.7% | 74.2% | 78.3% |
Stage 4 サブタイプ別術後生存率曲線 2011.4~2022.5 n=67*

サブタイプ | HR+/HER2-(A) | HR+/HER2-(B) | HR+/HER2+ | HR-/HER2+ | HR-/HER2- |
---|---|---|---|---|---|
5年生存率 | 83.3% | 65.0% | 85.7% | 100.0% | (32.0%) |
トリプルネガティブ乳癌においても抗PDL1、抗PD1抗体療法の登場により、長期生存に期待が持てるようになりました。